カメラマン山元彩香さんインタビュー【後編】

merweddingで、コスチュームジュエリーアクセサリー〝maruo〟を撮影した新進気鋭の写真家・山元彩香さん。
【前編】では、山元さんの写真家になるきっかけや写真越しに見える人間の"からの器"や撮影について教えていただきました。
【後編】では、写真集のエピソードや、merweddingでの撮影について教えていただきました。

山元彩香さんprofile

山元彩香/Ayaka YAMAMOTO
フォトグラファー
1983年 兵庫県出身。京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒。
米国への交換留学を機に写真の制作をスタート。
自身の持つ知識や経験や言葉の通じない東欧諸国やアフリカなどに滞在し、現地で知り合った少女たちのポートレート写真を撮り続ける。
それらをまとめた写真集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』(T&M Projects、2018)が、2019年「さがみはら写真新人奨励賞」を受賞。
国内外で写真展やレジデンスに参加。
ayakayamamoto.com

写真集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』がとても素敵です。写っているどの人も美しい。
撮影スタジオできちんとライティングして、完全に計算して撮ったような世界にも見えますが、実はそんなふうに遊びの延長で撮っていたんですね。

そうなんです。よく言われます。スタジオで、ファッションモデルを使って撮ったんじゃないか、って。でも本当に、写っているのは普通の子たちなんです。私は廃墟の雰囲気が好きなので、辞書で「廃墟」と見せて、村の子たちに廃墟へ連れて行ってもらって、そこで撮る。すべて自然光です。光のきれいなところを探して撮ります。それはやっぱり、絵画をやっていたことがすごく役に立ちました。エストニアでの撮影を皮切りに、その後はラトビア、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、ルーマニア、ベラルーシなどの国々で、同じやり方で写真を撮りました。そうして10年ほどたって、写真集にまとめる作品たちができたんです。

●中には裸身の人もいますね。

(写真集の写真を指差しながら)この子は実はエストニアの施設で、一緒にボランティアをしていた子。チェコの子で、コンテンポラリーダンスをやっていて、だからすごく芸術表現に理解があって、脱ぐのも全然平気だった。少し英語が話せて、だから意思の疎通がとれました。すごくいい子で、その後、チェコまで遊びに行きました。

●写真を撮られるのを嫌がられたことはありませんか?

一回だけ、断られたことがあります。断る、というか、服を変えたくないと言われた。その子は何か文字が書いてあるTシャツを着ていたんですけど、それを脱いで衣装に着替えたくない、と。なんでそんなに頑なに服にこだわるんだろう、と思って、英語のわかるロシア人の友達に理由を聞いてもらったら、ここには神様に対する祈りの言葉が書いてあるから、これは脱ぎたくない、このまま撮ってほしい、と。それを機に、撮る人にインタビューをすることを始めました。インタビューといっても、簡単な質問をするだけですが。それまでは、相手のことを何もわからずに、奪い取るように写真を撮っていたけれど。その人の中には信仰、地域性、暮らし方、家族関係など、いろんなものが入っているわけですよね。そういうことを知ってから撮ることをしてみようかな、と思いました。「写真を撮る」という行為は相手あってのもので、相手や環境に対してこちらがリアクションして、撮り方が変わっていくものなのかな、と思います。

●インタビューをしてから撮ることで、写真が何か変わりましたか。

そうですね。(写真集の写真を指差しながら)たとえばこの写真なら、この子の名前の意味を尋ねて。この子はラリッツァという名前で、ブルガリアで野に咲く花の名前だそうです。私はどうしても、その花が見たくなって。花屋さんで買えるかと聞いたら、今の時期にはない、と。それでもどうしても見たくて、執念ですよね、山の上まで探しに行って、その花をとうとう見つけたんです。みんなに「すごいね」「よくあったね」と驚かれました(笑)。その花を、持っていた透明のお面に入れて、彼女にかぶってもらって撮った。よく見ると、お面から、花と一緒に入れた水が滴っているのが写っています。
そんなふうに、相手にインタビューすることで、写真になんらかの物語性だったり、現実の一部などが加味されたところがあります。

●東ヨーロッパの国々以外でも、撮影をしていますか?

去年初めて、ずっと行きたかったアフリカへ行きました。マラウイという、アフリカ大陸南東部にある国へ。今年も、実はガーナの小さな村へ行くことになっていたんですが、コロナで行けなくなってしまった。海外へ出にくいこともあって、今は日本で撮ることに興味が湧いています。沖縄へ行ってみたい。沖縄の自然の中で生きる人を撮ってみたいです。

●merではポートレートではなく、アクセサリーやバッグといった〝物撮り〟に挑戦していただきました。

はい、初めての経験です。でも物と言っても、圓尾瞳さんの作品はヴィンテージパーツを使っているでしょう。私も、ポートレートを撮るときに廃墟を使うのは、廃墟が時間を内蔵している器(場所)だから。ヴィンテージの物も同じで、時間を内包しているのを感じるから、愛でることができる。撮り方は人間と一緒です。人と同じで、その物のいいところを探す。自然光のいい光を探して撮る。「この人が一番よく見えるように」と思って撮るのと、今回の物撮りは同じで、違和感はまったくなかったです。


そのあたりはmerのアートディレクターさんが、よくわかってくださっていて。圓尾さんの作品と、私の写真を組み合わせたら、きっと面白い世界ができると思って引き合わせてくれて、今回の仕事が実現したんです。アートディレクターさんは8年前にパリのギャラリーで私の写真を見て、ずっと記憶に残っていて、今回、声をかけてくださったそうです。

●merのオープン記念企画で、一般の方々のポートレートを期間限定で撮るそうですね。山元さんの世界観で、美しいポートレートを撮ってもらえるなんて憧れます。

みなさん、応募してくださるでしょうか(笑)。maruoなどのmerのヘッドドレスやアクセサリーをつけてもいいし、ご自分の好きな服装でもいいし。ブライダルの記念写真でもいいし、30歳記念とか還暦とか、なんでもいいです。記念でなくてもいいです。老若男女も問いません。merでは期間限定ですが、私個人はこれからずっと、そんなふうに一般の人のポートレートを撮ることもやっていきたいんです。今回の機会にぜひ応募してください。お待ちしています。

人を撮っているとき、いつも「美しい」と思っています。先にもお話ししましたが、個人の存在を超えて、大きなものが降りてくる瞬間がどんな人にもあって、「ここだ」と思ってシャッターを押すんです。そのとき、その人は崇高で、この上なく美しいです。シャッターを押す指がふるえるほどです。誰もがみんな、美しいんです。

end

<取材・本文=白江亜古>

いかがでしたでしょうか?
新進気鋭の写真家・山元彩香さんの成り立ちや撮影の裏側、新たな挑戦について教えていただきました。
merweddingでは、山元さんによるポートレートを行わせていただけます。
結婚された方に限らず、様々な撮影をさせていただけますので気になる方は是非こちらも併せてお読み下さいませ。