“maruo”デザイナーの圓尾瞳さんにインタビュー【後編】

作品を発表するや、オンラインショップで即完売してしまう、知る人ぞ知る人気アクセサリーブランド〝maruo vintage〟。
デザイナーの圓尾瞳さんは、このたびmerweddingで「花嫁や参列者」のためのコスチュームジュエリーを提案し、リースという形に初挑戦。
【前編】では、maruoというブランドが出来るまでと
【後編】では、パリで過ごした圓尾さんの心境とmaruoの魅力について語っていただきました。

圓尾 瞳さんprofile

圓尾 瞳 / Hitomi Maruo

コスチュームジュエリーブランド”maruo vintage”代表。
1989年神戸市出身。関西学院大学総合政策学部卒。学生時代よりファッションに興味を持ち、独学で服作りを始める。卒業後は卸売アパレル商社でバイヤーとして勤務する傍ら、オーダーメイドで衣装制作を行う。その後プレタ・パリコレサンプルの縫製アトリエにて修行を積み、フリーランスへ。独立後はアーティストへの衣装提供やアイドルのスタイリスト、パーソナルコーディネーター、ブライダルヘッドドレスの製作販売等を経て、2015年7月より自身のオリジナルブランド " maruo "をスタート。
http://www.instagram.com/hitomimaruo/

●アクセサリー作りをやめて、1年間パリで過ごしたそうですね。

「代替不可能な私にしかできないことがしたい」という思いで、フリーランスになって、〝maruo〟を立ち上げたのだけれど。「代替不可能な自分」ってなんだろう。それを知るために、もっと自分と徹底的に向き合わなければならないーー。という気持ちと、今の自分の状態から逃れたいという気持ちから、仕事を1年間休むことにしたんです。「もの作りのレベルを上げたい」「今あるブランドを壊して、ゼロから作り直したい」、そんなことを思っていました。

滞在先をパリにしたのは……。初めてパリへ行って以来、3ヶ月に1度のスパンでパリへは買い付けに行っていました。ヴィンテージのものたちには惹かれるけれど、実はパリという街自体は……。最初の旅行の時から、自分が勝手に思い描いていた〝憧れの花の都〟のイメージを崩されて、住みたい街ではなかったんです。でも、お客様から「次はいつ、パリへ行くんですか」と期待まじりに尋ねられるし。一方的にものを買うだけの関係では、あの街の醍醐味を知らないままかもしれない、と。それで1年間、パリで過ごしてみることにしたんです。フランス語をしっかり学ぼうと思いました。

2018年の秋にパリへ渡り、9ヶ月間みっちりと語学学校に通いました。空いた時間には、無数にチェックしていた場所をひたすら訪れる日々。ご存知のように、パリには本物の美がたくさんあります。長い歴史を経て今も残る美しいものたちに毎日触れて、その中で暮らせる喜びに、最初は胸おどる思いでした。自分の価値観や美意識が、どんどんアップグレードされていくのがわかるんです。ところが、ある程度の時間が経つと、反動なのか何なのか、気持ちが変わっていって。完成された圧倒的な美を目の当たりにするたびに、自分の作るものの薄っぺらさや素人感を突きつけられ、落ち込むようになりました。だめな自分と向き合う、孤独な時間が押し寄せてきました。

そんなある日、部屋の掃除をしているときに、過去に書いた自分あての手紙を見つけたんです。私はよくノートにメモしたり、自分あての手紙を書いたりするんですよ。アーティストとして生きていくために必要な心構えや、これからやりたいことや、思いついたアイデアやヒントなどを、頭の中を整理するために書く。パリのアパルトマンで見つけた手紙は〝80歳のわたしから、現在のわたしへ〟と題したものでした。中にこんなフレーズがありました。〝あなたは作ることで力を得る。頭で考え過ぎるのをやめなさい〟。

ハッとしました。私の中で何かが吹っ切れました。答えはすでに自分が持っていたんですね。しばらく開けていなかった保管箱を、あける気持ちになりました。コツコツと集めてきたヴィンテージパーツたちが納められている箱です。パリの穏やかな陽の光に晒されて、ひとつひとつが重厚な輝きを見せてくれるヴィンテージパーツを見ていると、私のたどたどしいフランス語に、一所懸命耳を傾けながらパーツを提供してくださったディーラーさん、おひとりおひとりの顔が思い浮かびました。これらのパーツは紛れもなく、私が出会った〝宝物〟なのです。私が得ることとのできた運のようなもの。

〝宝物〟を手にすると自然に、これにはこれを組み合わせて……と、いつの間にかアクセサリーを作っていました。パリの孤独の中で、それが私ができる唯一のことでした。作ったアクセサリーを恐る恐る、数ヶ月ぶりにインスタグラムに投稿してみました。すると、フォロワーのみなさんから暖かい反応をたくさんいただけたんです。「欲しい」「可愛い」「大好きです」、そんな言葉が海の向こうから届くことの喜びに、心が震えました。パリのメトロの中で、みなさんからのメッセージを読んで、「こんなにも恵まれていることを、どうして私は見失っちゃったんだろう」と涙が出そうになるのを必死にこらえました。

そのときの自分にできることをやり続けるしかない。作品を通して、等身大の私を見てもらうしかないーー。当たり前のことにようやく気がつきました。また、〝maruo〟をスタートさせる勇気が湧きました。日本で〝maruo〟を待ってくださる方がたくさんいる。これ以上の幸せはないです。

●今回、merでは、ウェディングやパーティ用に特化した作品を作っていただいています。
リースというスタイルも〝maruo〟の初めての試みですね。

はい。今回のアプローチにも、実は物語があって。パリ滞在中に、私のインスタグラムを見てくださった方から、ちょうど自分もパリに来ているので会いませんか、とお誘いをいただいたんです。その方はアートディレクターで、ヴィンテージの家具などのリースの会社も経営していて、そのための買い付けに来ているとのこと。
男性ですが、私の作るアクセサリーを「かっこいい」と言ってくださって。
そのときはいろいろお話をしただけなのですが、後日、merweddingというウェディング用のアクセサリーのリースショップを始めるので、作品を作ってもらえませんか、とお話をいただきました。

ブライダルのヘッドドレスは、昔も作っていました。でも昔と今とでは、作品作りのコンセプトがまるで違います。私はパリで言葉を学んだことで、ヴィンテージのパーツを求めるときに、ヴァイヤーさんからそのものに対する説明というか、古き美しきものへの思いを聞けるようになりました。たとえば、金属で作られた唐草模様の美しいパーツに惹かれて手に取ると、「きれいでしょう、それは本の装飾品。家族の大事なアルバムなどのずっと伝えたい本を、昔は装飾品で美しく彩っていたんです。中でも、こんなにきれいに手で色づけされたものは珍しいわ」と、ディーラーであるマダムが熱っぽく話してくれる。古くから愛され、大切にされてきたものは、それぞれがこうした物語をはらんでいるんですよね。今と違って、昔のものは作るのに膨大な時間と手間がかかっています。素材も、今では手に入らないものが多い。中には芸術品としか言いようのない貴重なものもあるし、アクセサリーとして使用するパーツ自体が非常に高価だったり、あるいは経年でもろくなっているものもあります。


そうしたヴィンテージのパーツを、現代の私たちに似合うものにリ・デザインして、古き良きものに命を吹き込むのが私の仕事です。ひとりで持つよりも、リースという形で特別な日に身につけていただいて、たくさんの人に末長く使ってもらえるのは理想的です。みなさんに美しく纏っていただくことで、ヘッドドレスもアクセサリーもまた輝く。使うだけじゃない、使われるだけじゃない、ましてや使い捨てではない、ひととものとの関係が築けたら素敵だと思うんです。

●〝maruo〟のコスチュームジュエリーの魅力とは?

作品を作るとき、私はまず、全体のシルエットを考えます。たとえば全体をダイヤ型にしたいとイメージして、素材を組み合わせていく。大事なのは心地よいバランス。ですから、とても大きな鏡で、制作途中のアクセサリーを自分に当ててみて、顔が明るく見えるバランスや、顔の輪郭や首がシャープに見えるバランスを探っていきます。平面のデザイン画から起こすのではなく、鏡で見ながら立体的なバランスの良さを追求するわけです。〝maruo〟のコスチュームジュエリーが、花嫁様を美しく見せる理由はここにあります。ウェディング用のヘッドドレスやアクセサリーだけでなく、参列者やパーティに使ってもらえるジュエリーバッグも提供してはいかがですか、ということは、私からくだんのアートディレクターさんにご提案しました。いいね、やりましょう、と合意してくださり、今回のラインナップとなったのです。


アートディレクターさんが引きあわせてくださった写真家の山元彩香さんはじめ、撮影スタッフの方々とも素敵な出会いができて、merの作品撮りは素晴らしいものとなりました。これを見て、たくさんの方々が利用してくださって、〝maruo〟がみなさんのかけがえのない美しい時間を作るためにお役立ちできれば、私もこの上なく幸せです。

end

<取材・本文=白江 亜古>

merweddingでは、maruo vintage初のブライダルラインをご用意しております。
ヘッドドレス・イヤリング・パーティーバッグ。
maruoセレクトのヴィンテージパーツを使用した世界に一つだけのオリジナルアクセサリーでございます。
花嫁様はもちろん、列席のお客様から、成人式の前撮りやちょっとしたデートやパーティーにも使用いただける商品が盛りだくさんです。
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